たそがれ清兵衛

冒頭、主人公の井口清兵衛は、妻が結核で倒れ、男やもめとなる。妻は下級武士の身分では考えられないほど盛大な葬儀を受ける。清兵衛は穀物倉庫で藩の備蓄品を管理する仕事をしている。同僚からは「たそがれ」と陰口をたたかれる。夕方になると、清兵衛は老いた母と萱野と糸という幼い娘の面倒を見るために急いで家に帰り、上司や同僚たちと夕食や芸者、酒を囲むのが恒例となっている。清兵衛は武士でありながら、風呂にも入らず、身なりもぞんざいだ。着替えや入浴料よりも、幼い娘たちの健康や母の薬代が優先される。しかし、清兵衛の幼なじみの朋江（飯沼通之丞の妹）が帰ってきてから、状況は一変する。