飛鳥地方は、日本発祥の地です。ここには、古来、待つことの中で人生を全うする人々がいた。現代人は、この「待つ」という感覚を失い、今に感謝することもできず、自分の計画通りに物事がどんどん進むという幻想にすがっているように見える。
昔、神が宿ると信じられていた3つの小さな山があった。畝傍山、耳成山、香具山であり、今も残っている。その昔、ある有力者が、この山を自分の心の中の葛藤に喩えた。山は人間の業(ごう)の表れである。
時は流れ、現代。祖父母の果たせなかった希望を受け継ぎ、人生を歩む拓海と加代子。彼らの物語は、この地に集積された無数の魂を表す、悠久の物語である。-カンヌ国際映画祭