レイモンド・レッドは、現代フィリピンのオルタナティブ・シネマのパイオニア的存在である。フィリピン芸術高校とフィリピン芸術大学で学んだ後、視覚芸術と写真を学んだ。1980年代には、スーパー8ミリや16ミリの実験的・物語的な短編映画を数多く制作し、国内および国際映画祭で賞を獲得し、一躍注目を浴びるようになった。その後、新世代のインディペンデント映画制作者に刺激を与え始め、様々な映画ワークショップや大学の映画・美術・マスコミプログラムの常連講師となり、今日の著名なフィリピン人インディペンデント映画制作者の多くを早くから指導している。
1990年には、権威あるDAADベルリン・アーティスト・イン・レジデンス・プログラムに招かれ、またZDF第2ドイツテレビから映画制作助成を受ける。この作品は、商業映画館で公開された最初の真のフィリピンの「オルタナティブ」映画のひとつであり、フィリピンのオルタナティブ映画と主流映画との間のギャップを埋めるインディーズ映画と見なす人もいる。その後、1993年にマニラ映画祭で主要な賞を受賞した歴史大作「サカイ」、1997年にフィリピン放送協会とアジアTVアワードで賞を受賞したテレビ長編「カマダ」を制作した。
また、フィリピン人として初めてロッテルダム・フーベルト・バルス記念助成金を受賞し、オックスフォード世界映画史に掲載された2人のフィリピン人映画監督のうちの1人であり、短編映画「Anino」で2000年カンヌ映画祭の権威あるパルムドールを受賞した最初のフィリピン人であり今のところ唯一のフィリピン人であるという栄誉を得ている。また、ソニー、キヤノン、コダック、フジなどの動画技術発表会でスピーカーを務め、国内外の映画祭で審査員を務めるなど、技術的な専門家としても知られている。
また、テレビコマーシャルやミュージックビデオの制作にも積極的で、さらに実験的な短編作品もいくつか手掛けている。最近では、『Himpapawid』(Manila Skies)(2009年)と『Kamera Obskura』(2012年)という2本の長編映画を制作し、賞を受賞している。今年2015年9月、11月に公開予定の新プロジェクト「Rebels With A Case」の制作に着手している。