亀井文夫

亀井は1928年にソ連に渡り、映画製作を学んだが、病気のため帰国せざるを得なくなった。東宝の前身である写真化学研究所（PCL）に入社し、ソ連のモンタージュ理論の影響を強く受けたドキュメンタリー映画（当時は文化映画と呼ばれた）を撮って名を成した。上海、北京など日本の中国での戦争に関するプロパガンダ映画が多かったが、「たたかう兵隊」は反戦映画として当局から批判を受け、ある警察官は「これはたたかう兵隊ではなく、疲れた兵隊だ！」と抗議した。
この映画は公開を阻止されたが、後に日本ドキュメンタリーの傑作の一つとして賞賛されることになる。亀井は俳人小林一茶の映画を撮った後、日本で唯一治安維持法違反で逮捕され、1939年の映画法で映画監督免許を失った最初の映画監督になった。 戦後は、岩崎昭が日映で製作した『日本の悲劇』で映画製作を再開し、悲惨な戦争を進めた日本の指導者の責任を追及した。しかし、この映画は、天皇を批判的に描いているため、占領軍当局によって上映禁止になった。このように亀井は、日本政府とアメリカ占領軍の双方から映画を禁じられた。亀井は、山本薩夫と共同監督した『戦争と平和』などの劇映画も制作したが、在日米軍基地、原爆、部落差別、環境破壊などに抗議する自主制作ドキュメンタリーを中心に制作を続けていた。