銚子文六の新聞小説を吉村公三郎が撮影した娯楽大作で、前編・後編に分かれている。前編は「南の風 みずえの巻」(93分)、後編は「南の風」(87分)として公開された。和竜」同様、佐分利信、高峰三枝子、水戸光子などが出演しているが、戦時中には珍しい爽やかなコメディである。
主人公は、佐分利信を演じる元男爵の息子。大人になり、長期の仕事もなく暮らしていたところ、シンガポールで笠智衆を演じたことのある旧友が、ある話を持ち込んでくる。西南の役で死んだと思われていた西郷隆盛が、実は生き延びて東南アジアで新しい宗教を興し、今はその遺児が教祖になっているという不思議な話であった。もし、その宗教を日本に広めることができたら、とても興味があるし、周りの心配は別にして、たくさんお金を使いたい。
そんな感じで、高峰三枝子と水戸光子の恋も絡んだ面白い話だったのですが、今は原作が絶版になっているようで、DVDもまだ出ておらず、ちょっと残念な権利です。戦時中、こんな軽い話は理解できないようで、あるいは木根旬のベストテンには入らなかったかもしれないが、もう少し評価されてもいい作品かもしれない。(https://ameblo.jp/caro88/entry-10947986445.html)