植木等とのぼせもん

1962年のことである。植木等には信じられないことがある。自分が歌った「スーダラ節」が空前の大ヒットを記録しているのだ。植木等とクレージーキャッツは、テレビや映画に引っ張りだこで、植木等は一躍スターになった。多忙を極める彼のために、運転手も兼ねたアシスタントが必要だった。そして、植木の撮影現場に同行することになったのが、松崎正臣という非常にエネルギッシュな青年であった。彼は、植木等とクレージーキャッツの演技に圧倒される。松崎は、植木等とクレージーキャッツの演技に圧倒され、そのドタバタぶりと音楽のうまさに感心した。しかし、現実の植木は真面目で、こんなことをやっていていいのだろうかという思いがあった。そんな植木を、少年時代に父を亡くした松崎は、いつの間にか「お父さん」と呼ぶようになった。植木や妻の富子、そして父の鉄蔵も、松崎を家族のように受け入れてくれた。松崎は芸能人を志し、仕事と恋愛に没頭していた。二人は最高の師弟コンビだった。~~ 原作は、俳優・小松政夫の自伝的小説「のぼせもん」。