妻は、くノ一

時は江戸時代末期。平戸藩の天文方・双星彦馬は、星と海にしか興味のない、ちょっと風変わりな人物である。そんな彼のもとに美しい花嫁・織江が現れ、彦馬は彼女を生涯大切にすることを心に誓う。しかし、そんな夢のような夫婦生活から、わずか1カ月足らずで新妻は忽然と姿を消してしまう。実は織江は、藩の不正な取引や活動を不審に思った幕府が送り込んだ女忍者だった。幕府は西国の諸藩への警告として、平戸藩を処罰し、滅ぼそうと企んでいるのだ。そうとは知らず、彦馬は妻を求めて江戸に向かう。旧友の仙右衛門から旧平戸藩主の松浦静山の紹介を受けるが、静山から「織江が現れたら斬る」と言われる。彦馬は、静山がどうしても妻を奪おうとするならば、自分が妻の盾になると宣言する。織江を探すため、彦馬は小学校の教官となり、太郎吉という少年と出会う。一方、静山邸では毎夜、祭囃子が聞こえる怪奇現象が発生する。彦馬は火の玉を自分の目で見て、小学生たちと一緒にその謎を掘り下げ始める。しかし、それは幕府の陰謀の核心に迫るものだった……。