ミョンソンさんは、昌信洞(チャンシンドン)縫製場で縫製作業をして生計を立てているベテランだ。韓流ドラマに出演する有名俳優たちが、自分が作ったデザイナーズ商品を身に着けているのを見るのが、彼女の一番の楽しみだ。しかし、仕事が減り、仲の良かったヒョンがチャンシンドンから去ってしまった。明善さんは心配になる。昌信洞に縫製工場ができたのは1970年代末のことだ。朝鮮戦争後、古着を売る市場ができ、それが後に平河市場になった。平河市場の成功に伴い、昌信洞の難民が住む掘っ立て小屋の集落に縫製工場が設立された。韓国のアパレル産業とともに、縫製場も発展してきた。しかし、そうした縫製工場での労働力の搾取は、言葉では言い表せないものだった。私たちはその苦しみの歴史を全泰日殉教者の死として記憶しているが、その傍らには、薬を飲んで眠らずに納期を守る女性労働者の姿もあった。「糸」はドキュメンタリーとフィクションの境界を越え、実際に昌信洞で働くアマチュア俳優たちと一緒に行動している。彼らを通して、女性労働者の歴史を過去の「停止」ではなく、現在の私たちの生活との「継続」として記録している。ユーモア溢れる興味深い作品。
(提供:JIFF)