海炭市。今年もまた寒い冬の霜が降りる頃、地元の造船所が縮小され、解雇が相次ぐ。蒼太は妹の穂波と二人で暮らしている。 造船所で仕事を失った颯太は、自分たちの状況に不安を感じ、姉の穂波と一緒に近くの山の中腹で初日の出を拝みに行く。
市役所に勤めることになった真琴は、再開発地区に残る一軒の家を訪ねる。その家は70歳のおばあちゃん、トキのもので、裏庭で猫と数匹の家畜と一緒に暮らしている。トキは土地を明け渡すことを拒み、真琴はそうしなければ強制的に立ち退きを迫られることを強調しようとする。
49歳の龍三は、小さなプラネタリウムで働きながら、妻の春代と10歳の息子との関係が悪化している。春代は、怪しげなホステスで働くことに生き甲斐を見出していた。
父の経営するガス会社を継いだ春夫は、経営状態を心配する。さらに春夫は、気性の激しい妻との関係もギクシャクしていた。一方、妻は息子の晃に怒りをぶつけていた。
ある日、街宣車の運転手である太一郎は、海炭の繁華街を歩く息子の宏を見つける。宏は東京に住んでいるが、仕事の関係で海炭に帰ってきていた。年末年始にもかかわらず、父とは口をきかない。
「海炭市叙景」は、佐藤泰志が未完の小説「海炭市叙景」のために書き下ろした短編小説集が原作です。