時は文化・文政期。町人文化が成熟・隆盛する一方で、徳川11代将軍家治の側近による行政が横行し、江戸の風紀は堕落していた。武家や町人への不満が高まり、町に住む庶民の生活も苦しくなってきた。突然、真夜中に汽笛が鳴り響く。侠客・ねずみ小僧は千両箱を持って屋根伝いに難なく逃げ出し、寝静まった長屋にその金をばらまく。この泥棒の正体は、次郎吉と呼ばれる遊び人である。ただの泥棒だが、正義にこだわっており、一銭ももらえないような事件にも首を突っ込む。それは、江戸に住む人々の幸せな姿を見るのが好きだからである。
~~ 赤川次郎の小説「ねずみ、江戸を走る」シリーズから引用。
