父の定年退職が間近に迫り、私は当然のように父に尋ねた。「お父さん、引退したらどうするんですか」。彼は、「まだ言えない計画があるんだ。もう準備は万端だ」と言った。それで、この人はどうするんだろうと思って、その人を追ったドキュメンタリーを作ろうと思ったんです。それが映画の始まりです。
父は中学校の美術の教師をしていて、生涯の夢として「モンマルトルの丘に行って絵を描きたい」というのがあったんです。私は彼を生まれて初めてパリ行きの飛行機に乗せました。私の心からの温かさと同時に、「この子は絵が売れるようになるのだろうか」とも思いました。ところが、父は「写真を売ろうと思っても無理だ。私の写真を好きな人が、いずれ現れるだろう “と。果たして、父の写真を好きな人はいるのだろうか。父は再び情熱を燃やすことができるのだろうか。パリのモンマルトルの丘で、当主の人生の第2章が始まる。
(出典:ハンシネマ)