鬼畜

1976年、東京の労働者階級が住む地域。竹中惣吉(玉木宏)は、働き者の妻・梅子(常盤貴子)と共に、竹中印刷という小さな印刷会社を営んでいる。大手印刷会社の下請けだが、印刷機の新機種を導入したばかりで、仕事は順調だ。しかし、隣の食堂から火の手が上がり、印刷所はあっという間に焼けてしまう。非常事態だというのに、印刷ブローカーの接待に出た宗吉は、まったく連絡がつかない。実はこの時、彼は恋人である山田菊代(木村多江)の家にいたのだ。6年前、料亭の給仕をしていた彼女と秘密の関係を持ち、3人の子供までいる。火事から2年後、惣吉と梅子はわずかな保険金で別の土地に印刷会社を開業していた。しかし、経営は厳しく、菊代に小遣いを送ることもできなくなった。うんざりした菊代は家に押しかけ、梅子と初めて顔を合わせる。菊代は、優柔不断な惣吉と、自分を見下す梅子に怒りを露わにする。彼女は3人の子供をそこに置き去りにして姿を消す。やむなく惣吉が引き取るが、仕事一筋で子供嫌いの梅子は、子供たちを育てないと宣言する–松本清張の原作『喜久』。