思い出の食卓を探せ」という一行の広告を頼りに、お客さんは看板も暖簾もない「鴨川食堂」に辿り着く。京都・東本願寺の近くにあるこの目立たない食堂にやってくるのは、悩みを抱えた現代人である。仕事、家庭、人生、恋愛、人間関係…悩みはさまざまだが、看板娘の鴨川こいしは客の悩みを真摯に受け止め、親父の流は探偵として鍛えた勘と観察力で客が本当に食べたいものを見極め、再現してみせる。こいしと流の努力の結晶である「思い出の料理」を食べたお客さんは、生きる勇気と楽しみを得て、鴨川食堂を後にするのであった。
~~ 柏井壽の小説『鴨川食堂』から引用しました。