破裂

心臓外科医・嘉村洋一郎の野望は、老いた心臓を蘇らせ、歴史に名を残すこと。医者は3人殺して成仏する」を信条とし、研究の実用化に全力を尽くす硬派なエリートである。しかし、この医療には嘉村も気づかない副作用があった。心機能が劇的に回復した後、心臓が破裂して突然死するのだ。超高齢化社会の究極の解決策として、この副作用による老人の無痛死実現に目をつけた役人がいる。省のマキャベリと呼ばれる稀代の戦術家、佐久間和久である。佐久間は巧みに嘉村に接近し、「夢の治療法」を乗っ取るための策略を練る。この医療の最初の参加者は、心不全で引退した国民的名優・倉木廉太郎だった。死ぬ前にもう1本映画を作りたいと執念を燃やす倉木は、真っ先に臨床試験を受けることになる。しかし、その後に恐ろしい副作用が明らかになる。体内に時限爆弾を抱える倉木と、主治医の神村の間にはある秘密があった。実は神村は、幼い頃に母を捨てた倉木の隠し子だったのだ。神村は倉木を心の底から憎んでいるが、仕方なく彼のために手術を行う。副作用が明らかになったとき、嘉村は父の命を救おうとするのだろうか。