主人公の薫は不動産屋で働きながら、近所の釣り堀の庶民的な店主の手伝いをするようになる。そこで彼女は、釣り針に餌をつけるのを手伝ってほしい内気な少女に出会い、小学4年生の頃の自分を思い出す。
その頃、薫は、嫌な弟、ピリピリした専業主婦の母、中古車屋を営もうとするがうまくいかない無気力な父と一緒に暮らしていた。そんな中、母さんが家を出て行ってしまう。やがて、夕食を作りに来たという見知らぬ女性が玄関に現れる。ヨーコと名付けられた彼女は、薫が教えられてきた正しい女性像のすべてを縮めたような、歩く、話す女性だった。力士がするような不機嫌な挨拶で、椅子に座り、ヤクザのようにライターを鳴らし、薫の好物のチョコパフを、動物園で飼育員が動物に餌をやるように、急いで洗ったカレーボウルに捨てる。 彼女はそのスナックを「エサ」とまで呼ぶ)この女には礼儀がないのか?
しかし薫は、彼女が気さくな人柄であることにすぐ気がついた。薫は、洋子から買い物に誘われ、恐る恐る出かけた。ドロップハンドルの緑色のレーシングバイクに乗る洋子を見たとき、恥ずかしさも感じた。薫は、10歳になっても自分の自転車に乗れず、階段の下でひっそりと錆びていることを陽子に告げられない。
(出典:ジャパンタイムズ)