あぽやん

新野剛志の連載小説を原作とする『あぽやん』は、海外旅行を支える人々の物語である。旅行会社から空港で働く人々まで。
ジャルパックに勤務する遠藤啓太は、本社で海外パッケージの企画を担当していた。ある日、突然、成田空港への転勤を命じられた。成田空港のカウンターは、出入国者の接客をするのが仕事であり、成績の悪い者が配属されるのは社内の周知の事実であった。そこで遠藤は、経営陣が自分のことを、会社の売り上げアップに貢献できない役立たずと見ているのだろうということに気がついた。パッケージツアーを作りたい一心で入社した遠藤は、すっかり落ち込んでしまい、会社を辞めようかと考えるようになった。
成田での初出社の日、遠藤は上司の今泉俊男の人柄に衝撃を受ける。彼は、いつも馬鹿笑いをしているような、まったく使えない男だった。部下はほとんど女性で、その中の一人、森尾春子は遠藤に敵対心をむき出しにしている。そんな彼に唯一優しさを見せたのが、馬場華絵だった。遠藤は、早く元の本社勤務に戻れるようにと、新しい職場で頑張っている。お客さまがお帰りになればいい」から「お客さまを笑顔でお帰りいただく」へ、お客さまがお帰りになる前にトラブルを解決することで、遠藤は少しずつ新しい仕事への情熱を覚えていく。